直近の施設更新: 1960年12月31日
建物落成: 1905年
創業: 1905年
確認: 2023年7月21日
- 2021年6月1日より長期休業、2022年7月1日よりデイユースに限って営業を再開中。
- 「鳳明館」本館は、本郷の学生下宿街の一角、昼間でも大して人通りのない狭い裏通りに面して建つオール木造の和風旅館。
見た目の風情はとりたてて「高級旅館」という感じではないが、実は空襲をあやうく免れた戦前(明治末期)からの建物で、門柱横の壁にうめこまれたブロンズの銘板には「登録有形文化財」と表記されており、つまり建物それ自体が現在では文化庁お墨付きの「名所」。この指定を受けた建物で営業している宿泊施設は都内では唯一。
- 戦前の開業当初は学生下宿だったそうで、それを戦後本格的な旅館に改造して現在に至っているようだ。
- すぐ隣の「台町」、および本郷通りに近い「森川」の2つの別館は、昭和20~30年代に当初から旅館として建てられたもの。「普請マニア」だった当主の趣味で、贅を尽くした作りの部分が多い。
- と、このへんまでは雑誌「東京人」(都市出版/月刊)1999年9月号に載っていた記事(集合住宅物語18「鳳明館」文・植田実)からの受け売りだが、じつは筆者は1960年代の終わりごろ、中学校の修学旅行でこの旅館に泊まったことがある。あとで(たぶん)美術の時間にこの旅館前の風景を絵に描いたことなどから、旅館の名前も鮮明に記憶していた。
2003年、実に35年ぶりで同じ旅館を訪れて(単に前を通りかかっただけだが)写真を撮ってきたのだが、旅館の看板が中学生時代の記憶とまったく同じで、それはもう、それだけで感動ものだった。
- 自分自身が体験したとおり、この旅館、一時期もっぱら修学旅行客など団体利用中心だったようだが、今では時代に応じてサービス内容も変化し、家族や少人数グループ、あるいは「日本らしい宿」を求める海外客などの利用が増えていると聞く。BR>
- 周辺環境は、常套句になるけれど「閑静」そのもの。とくに本館・台町別館は大通りから離れているうえ、なにしろ文京地区の真っ只中・東京大学のお膝元。通りに出ても、夜中に騒がしくなるような系統の店は見当たらない。というか、そもそも風俗営業は禁止、夜中までやっているのはコンビニだけだそうだ。
- そんなわけで、都心の高級シティホテルのような意味での「快適さ」をこの旅館に求めるのは当然ムリがあるし、「高級」和風旅館というわけでもないが、個人的な思い入れ分を割り引いても、やはりここは「東京を代表する宿泊施設のひとつ」といってよいんではないかと思う。