エキストラと「事故」のリスク[2016/12版]

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「エキストラは楽しいよ~」というのが当ブログの基本スタンスですし、実感として「とりたてて危険な仕事ではない」のも確かですが、こういう話題も一度はとりあげておくべきかな......ということで、過去に実際に起きた「エキストラが巻き込まれた事故」の例を集めてみました。

<2016年12月追記>
 この記事はもともと「後日また見つけたら追加しておきます」という記述つきで公開したのですが、幸い、日本国内ではここ10年以上、マスコミをにぎわすほどの事故は起きていないようです。(海外のニュースは数件追加しました)。

  • 2005年6月21日午前6時ごろ、木村拓哉主演のフジテレビのドラマ「エンジン」(月曜午後9時)撮影のため静岡・小山町の富士スピードウェイに向かっていた大型バス(エキストラ36人が乗車)が、ワゴン車など計5台が絡む多重事故に巻き込まれた。幸いけが人はなく、エキストラは同局が用意した他のバスで撮影現場に向かい、6月27日放送の最終回のレースシーンの撮影に参加した。
  • 2004年10月2日夕刻、長野県東御(とうみ)市御牧原の長野新幹線工事用の傾斜したトンネル(機材搬入や土砂運搬用)内で音楽バンドのプロモーションビデオ撮影中、撮影用発電機の排ガスの白煙がトンネル内に充満、撮影スタッフの男性1人と同県上田市や千曲市から動員された13~19歳の女性エキストラ6人が一酸化炭素中毒で病院に搬送される事故が発生。幸い全員軽症だった模様。

     当時スタッフだったという人の迫真の体験談が書かれたブログ→http://atsee.exblog.jp/m2005-07-01/
  • 2004年1月20日、神奈川・新横浜プリンスホテルスケートセンターで、木村拓哉がアイスホッケー選手に扮するフジテレビ(関西系)の連続ドラマ「プライド」(月曜後9時)の1月26日放映分のロケが行われたが、収録中、木村がファンサービスのつもりで客席に打ち込んだアイスホッケーのパックでエキストラの女性が前歯を折るなど負傷。女性は事故直後に収録現場近くの病院に搬送、その後自宅近くの歯科医院で治療。
  • 1991年9月、井筒和幸監督作品「東方見聞録」のロケ中、オーディションを経てエキストラ出演していた21歳の男優が衣装のよろいをつけたまま川でおぼれて死亡。作品はなんとか完成したものの劇場公開を果たせず、製作会社は倒産。宙に浮いた遺族への補償金は井筒監督が個人で引き継いで支払ったという。

 幸いぼくはこういった種類のトラブル直面したことはないですが、現地に行ってみなければ皆目どんな環境なのかわからない野外ロケはいうに及ばず、撮影スタジオ内でも、ゴツくて重い機械類、ベニヤ作りで足場の悪いセット、安定の悪い大道具や機材類などに囲まれた雑然とした環境で、けむいスモークを吸い込んだりしながらの活動です。実感として高くはありませんが、ある程度の確率で「事故」とか「ケガ」が避けられないのも事実でしょうし、実例にあるとおりロケバスで移動中の交通事故などは当然考えられます。

 また、冬のさなかに薄着で屋外に立ったり、真夏に真冬の格好などはかなり「普通」のこと。撮影環境にあわせて「自分の健康をそこなわないための工夫」(夏場なら飲料水の持参、タオル、扇子など。冬場なら防寒着や使い捨てカイロなどなど)は重要です。

 で、運悪く「万一のトラブル」が発生した際の「補償」はどうなっているか......というと、正確なことは「経験がないのでよく知らない」というほかないですが、安全対策の不備、不適切な指示など、製作側の責に帰す負傷/発病の場合、(1991年のケースに片鱗がうかがわれますが)相応の補償は得られると考えてよいでしょうし、多くの映像製作現場では、「撮影保険」に加入するなど、一応の備えはしているようです。
 ただ、かりに「副業/趣味でエキストラをしていた人が、ケガしなければ本業で得られたはずの収入まで100%補償されるか」というと、そこまで期待するのは苦しいのも現実かと思います。いずれにせよトラブルに遭遇してトクすることはありえないので、「守れる範囲で極力自分の身は自分で守る」感覚は重要だというべきでしょう。

 たとえば、
・高くて足場が不安定な場所に立たされる
・ジェットコースターのお客の役を長時間やらされる
・ひとつ間違えたらカメラを載せたクレーンに激突しかねないタイミングでの通行
・寒空の下で海に飛び込む
 などなど、「できない人がいておかしくない役柄」がエキストラに要求されることはたまにあります。
 命あってのモノダネですから、かりにそういった種類のことを現場で指示されても、「自分にはできそうにない」「こわい」「つらすぎる」と感じたらヤセ我慢は禁物。きっぱり断る勇気も必要だと思います。
 実際、不慣れなことをさせて大ケガでもされたら、作品そのものがイメージダウンしたり製作中止ということすらありうるわけですから、むしろ「できない」と思ったらちゃんと意思表示したほうが撮影スタッフ側も助かる、というふうに考えたほうがよいと思います。

オリジナル記事日付:2005年8月13日
改訂:2016年12月20日

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