エキストラ用語帳/演技関連

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<はじめに>(から抜粋)
 エキストラは「映像製作業界真っただ中」に足を踏み入れるわけで、そこでは一般人には意味不明な業界コトバがスタッフ間でびゅんびゅん飛び交っていたりします。

 インターネット等での一般公募エキストラは「初心者のみなさん」という前提で接してもらえるのが普通ですから、あらかじめそうした業界コトバを知ってる必要は特にありませんが、「知っていたほうが楽しめる」面はあるでしょうし、エキストラ事務所からの派遣の場合には、ある程度は知っておいたほうがよいコトバもあります。

 というわけで、知ってれば知ってるだけ楽しめるかもしれない「用語集」のページを作ってみました。 随時追加・訂正していく「つもり」ですので、折々ご参照いただければ幸いです。

用意 / レディ(ready)
スタート / ハイッ / アクション / 5、4、3......(秒読み型)
上手(かみて)、下手(しもて)
自分の右、自分の左
バミ、バミる
スタート位置
カット位置
>目線(めせん)
口パク / パントマイム
板付き
キッカケ / キュー(cue)
シャッター
アウトする / ハケる
見切れ(る)
オンリー、オンリー録り
ガヤ
オールアップ
クランクアップ
用意 / レディ(ready)
俳優が演技を開始してよいよう、各スタッフがスタンバイするためのかけ声。
エキストラは「背景役」なので、原則的にはこの「用意」で(ということはつまり「スタート」より1,2拍前のタイミングで)演技をスタートさせるよう指示される場合が多い。
スタート / ハイッ / アクション / 5、4、3......(秒読み型)
演技開始の合図。現場によって声のかけかたが異なる。秒読み型の場合、最後の「1、ゼロ」あたりは声に出されず、各人が心の中でカウントする。
かけ声の直後に助監督がカチンコを鳴らす場合もあり、その場合はカチンコの音が消えてから演技開始となる。
上手(かみて)、下手(しもて)
舞台用語。客席から見て舞台の右側が上手(かみて)、左側が下手(しもて)。位置関係が流動的な撮影スタジオやロケ現場でも、カメラの位置を客席側に見立てるかたちで援用される。
自分の右、自分の左
撮影時の微妙な立ち位置調整の指示時によく使われる表現。意味はコトバ通り。
たとえば「自分の右にあと30cmぐらい」といわれれば、自分自身を主体に考えて右手方向に30cm程度位置をずらせばよい。
バミ、バミる
「場見(る)」。俳優が立つ位置などを示す目印がバミ、バミをつける行為が「バミる」。バミるために主に使われるガムテープやビニールテープのことが「バミテープ」と呼ばれ、人の立ち位置の指定の場合は逆T字状に貼られることが多い。その場合は横線がつま先、縦線が体の中心線をあらわす。
人物だけではなく、いったん移動した机をあとでもとの配置に戻すための目印など、臨機応変に多用される。
 カメラの構図に目印が入り込んでしまう場合は除去される。 また、状況によっては、地面に足で線を引くだけとか、そのへんに落ちている小石を目印にする等、不要になったらすぐ除去できる素材が使われる。 
通行人役のエキストラなどでも、リハーサル時に指示されたスタート位置を記憶しておき、本番まで何度もそこに戻って繰り返すことになるため、なんらかの「目印」は必要となるが、この場合は「おおよそ」でよいため、たとえば周囲の建物、電柱等、なにかしら目印を自力で見定めて対応するのが普通。
 立ち位置を厳密に決めたい場合などは、エキストラといえども助監督が足元にバミって、そこから動かないよう指示されることがある。
スタート位置
演技開始時の自分の位置。特に通行人役などでは、テスト(リハーサル)段階はもちろん本番の場合も、あとでもう1度同じ動きを繰り返す可能性が高い。この場合、エキストラは「カット」がかかったら早めにスタート位置に戻っておき、次回その位置からまた演技開始するのが原則となる。
従って、あらかじめスタート位置の足元や周囲の目標物、あるいは周囲の人の配置などを手掛かりに、自分がどの位置からスタートしたのかをいったん記憶しておくことが望ましい。
⇒関連語「カット位置」
カット位置
前の撮影で「カット」がかかったとき自分がいた位置。次の撮影は続きのタイミングから始まるというケースも多いため、通行人役などの場合、念のためこちらもしばらく覚えておくのが望ましい。
⇒関連語「スタート位置」
目線(めせん)
演技者が見る方向のこと。撮影内容によっては実際になにかしら目標物が示され、「こちらを見て演技してください」などの指示が出される。
ドラマや映画の場合、特に指示がない限り「カメラ目線」(カメラのレンズの方向を直視する)は禁物。
 なお、演技者の目線の先にあたる場所でぼーっと撮影を見物していると、「演技の邪魔になるのでどいてください」と叱られてしまうことがある。 
口パク / パントマイム
俳優のセリフの録音を優先するため、背景となる他の役者やエキストラが声や音をたてないように演技すること。エキストラの演技機会の多くはこの状態で行われる。
慣れないと「うなづきすぎ」「身振り手振りがウソっぽい」など、不自然な動きになりがちなので注意が必要。
この指示下での撮影では、声だけでなく靴音や食器がぶつかる音なども避ける必要がある。靴に関してはラバー底のもので参加するとラク。
板付き
最初から同じ場所に居続けること。
キッカケ / キュー(cue)
撮影途中での、演技やセリフを言うタイミングのこと。カメラの視野の外、かつ演技者が確認しやすい位置で助監督が手を振って合図するなど、臨機応変に指示される。
シャッター
画面をよぎる動き。たとえば俳優の手前を通行人役のエキストラが一瞬よぎることで「人ごみ」の雰囲気を演出すること。
アウトする / ハケる
カメラの視野から退出する。
見切れ(る)
撮影機材やスタッフ、待機中のエキストラ......など、映ってはいけないものが撮影画像に映ってしまうこと。
昨今、他業界で「見える範囲から外れている」というまったく逆の意味の用例が拡大、たとえばコンサート会場の"ステージ中央が見えない客席"を「見切れ席」と呼ぶなどの例が一般化しつつある。
そちらになじんでいる人も、撮影現場ではまったく逆の意味だということは覚えておいて損はないだろう。
オンリー、オンリー録り
音声だけ録音すること。主要な撮影が終了した後、素材用の背景音(ガヤなど)をまとめて録っておきたいときなどに行われる。⇒関連語「ガヤ」
ガヤ
パーティー会場、コンサートホールなどの「人のざわめき音」のこと。編集素材として映像本体とは別に録音されることが多い。⇒関連語「オンリー」
エキストラ=「その他大勢」の意味そのもので「ガヤ」と呼ばれることもあるが、見下した表現になるため現在あまり一般的ではない。
オールアップ
出演者のうちの誰かの出演シーンの撮影がすべて終了した状態を指す。
「●●さん、このカットをもってオールアップとなりま~す!」といった声がスタッフからかかり、一同拍手......といった手短なセレモニーが行われることが多い。
重要キャストのオールアップの場合には、監督から花束が渡されたり本人の挨拶があったりなど、より手厚いやりとりが伴う。
こうした光景に居合わせたエキストラは、拍手におつきあいすることとなる。
クランクアップ
その作品のすべての撮影作業が完了した状態。最終カットに「OK」が出た直後に、
「本日このカットをもってクランクアップとなりました~!」
のような報告がスタッフからなされ、監督や主要キャストの挨拶などが行われるのが通例。
現場に居合わせたエキストラも、オールアップと同様に拍手につきあったり、ときには記念写真撮影にまぜてもらえたり、さらに運がよければビールが配られて乾杯につきあったりする場合も......稀にはあるけれど、どちらかというと「スタッフの盛り上がりをよそに、そそくさと帰途につく」場合のほうが多いかも。

2015年2月 8日
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