1991/01 北海道新幹線シベリア延長計画

さて今月は、ソ連のある新聞の投書欄に掲載された投稿を紹介します。モスクワ在住の日本人S氏が翻訳して筆者に送ってくれたのですが......うーむ。どうやら相当な知日家が書いたもののようで。

●新幹線をシベリアに!
ミ○○ル・S・ゴ○○○○フ

 日本の1991年度予算案づくりが今たけなわだが、とくに焦点となっているのが"整備新幹線"の財源問題だという。
 日米構造協議により、日本はむこう10年間で430兆円の公共投資をおこなうことになった。それに刺激されて"おらが地方に新幹線を"の声が各地で一気に高まったわけだが、運営を担当することになる日本の鉄道会社・JRは渋い顔らしい。
 なにしろ日本政府は、既存の新幹線のJRへの売り渡し価格を1兆円上乗せし、それを新線建設の財源にあてようとしているのだ。さすがはマネーゲーム国家・日本というべきか......ともあれ、"民営化"という名のペレストロイカの渦中にあるJRが難色を示すのも無理はない。
 ところで、"金食い虫で、フタを開ければ大赤字路線"といえば、わが国にも全長3千キロに及ぶ同類があることを同士諸君はご存知だろう。そう、バム鉄道(※)のことである。

【※注=バム鉄道='84年に開通した第2シベリア鉄道。利用者が低迷、"だれも求めていない道""ブレジネフ時代の停滞の象徴"などと批判されている】
 しかし同士諸君。極東地域の地図をよく見てほしい。バム鉄道の東端から日本のすぐ北方の島・サハリンまでは目と鼻の先。サハリンから北海道までもひとまたぎの距離だ。
 つまり、ふたつの海峡にトンネルを掘り、シベリアの原野に数百キロほど新線を敷設するだけで、ソ連と日本は地続きになる。技術的にも、両国の先進的鉄道技術が合体すれば、困難はないだろう。
 この国際新線を両国共同で建設するよう、日本政府に申し入れてみてはどうだろう。

 これが開通すれば、緊迫しがちな中東のスエズ運河ルートより高速で安全で安価なシベリア・ルートが確立し、ヨーロッパ-日本間の貨物輸送を円滑化できる。「東京-パリ間大陸横断超特急」「世界一深く美しい湖・バイカル湖」などなど、観光面もセールスポイントも無尽蔵だし、日本には島国を脱出できるというメンタルな魅力も大きいだろう。
 むろんわが国にとっても、日本の資金と先端技術が導入されれば鬼に金棒。バム鉄道は一気にドル箱路線に格上げされ、シベリア開発のテンポが一気に早まることは確実だ。

 そして日本は、整備新幹線の早期着工の動機と採算の見込みという大義名分を得ることができる。ローカル新幹線どころか国際路線になるのだから、予算などいくらでも増やせるだろう。また、必ずしも歓迎できないが、建設要員に自衛隊員を派遣すれば(もちろん丸腰でだ)、中東派遣でモメている「海外派兵」の既成事実も作れる。
 この点を強調してうまく交渉すれば、日本の自民党はよろこんでこのプロジェクトの建設費を全額負担するだろう。
 バム鉄道は、旧日本軍兵士が捕虜として建設に従事し、多数の犠牲者が出た路線だ。彼らの血と汗の結晶を日本につなぎ、東京始発の列車がモスクワめがけて時速数百キロでひた走る......その瞬間にこそ、日本とわが国の"戦後"は本当に終わるのだといえないだろうか。

(政治家 59歳)

 さらにアメリカがベーリング海峡にトンネルを掘れば、東京発シベリア経由ニューヨーク行きも可能になるなあ。飛行機が苦手な筆者には名案のように思えるんですが、皆さんのお考えは?

(c)YanaKen 1991 as バニー柳沢 オリジナル掲載誌:集英社「月刊PLAYBOY」1991/1(No.187)
PLAYBOY FRONT LINE バニー・柳沢の男の浮遊講座「今月は先月の来月」
掘っちゃえ、掘っちゃえ、ソ連へトンネルを! あっと驚く究極の日ソ友好関係成立の秘策とは。


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 「北海道新幹線」はまだまだ実現が遠い情勢ですが、「自衛隊派遣問題」のほうは、当時の海部内閣のもとで1991年4月26日にペルシャ湾へ掃海艇(機雷除去用の艦船)6隻が派遣され、これが「自衛隊海外派遣」の「初の既成事実」となりました。

●関連サイト
北海道新幹線のページ(北海道庁)