ほかの年度のことは知らないけれど、ぼくがいた年度の演劇科の雰囲気はどうもクールというか、コミュニケーションに乏しい雰囲気が漂っていてとけこみづらく、会話を交わした相手は数人しかいなかった。
その数少ない「会話する機会のあった同級生」の一人が、女優の高瀬春奈さんだ。講義で教授から指名され、3人1組で研究発表しなければならないことがあり(たしか、フランスの戯曲家・ラシーヌがどうたらこうたらというテーマ)、そのとき同じグループとなったのが直接のきっかけだ。
ちょっと日本人離れした体型・顔だちで、すでに女優のオーラみたいなものを発しており、精神年齢の低いぼくなぞには近寄りがたい雰囲気だと思ってたのだけれど、実際話してみるとけっこう気さくで、むしろ「異性のわりに話しやすいお姉さん」という感じだった。
当時文学座の研究生、在学中から映画などにも出演し始め、卒業直前にはNHK朝の連続TV小説「いちばん星」の主役(松井須磨子役)に抜擢され、一気に「時の人」となった。
まさにその時期にあたる卒業式当日(彼女も1年留年組だったので卒業年次もいっしょ)、大学の教室で会って目礼したのがたぶん最後で、その後特に交流はないけれど、今もドラマ、講演会、本の執筆など多方面で活躍されているようなのは元同級生としてちょっとうれしい。