みのり書房在職中、唯一ぼくが編集長をつとめた単発企画の雑誌。
みのり書房という出版社はじつは紙問屋の子会社。で、その紙問屋の社長(=みのり書房の会長)が、あるときぶ厚い紙質の雑誌見本(業界用語では「ツカ見本」)を持って、
「こういう感じの雑誌を作れないか?」
と言ってきた……というのがこの雑誌の企画のそもそもの発端。なんのことはない、
「売れ残った紙のはけ口」
を、この会長さんは探していたのである。
この「まず、消費すべき紙ありき」という経営理念が結果的には「若いモンが好き勝手できる(もしくは、徒手空拳、なけなしのバイタリティで乗り切るしかない)雑誌」という「月刊OUT」等の諸雑誌の体質の素地となった半面、たび重なる会長の「こういう紙質、こういうサイズの雑誌はできないか」攻撃に対応してゆく必要が当時の編集部にはあった。
で、そういう体質にそろそろ嫌気がさしてきていたぼくは、
「いっそ全ページ"切り取ってはがきと使える"というのはどうか」
と、捨て鉢ぎみな企画を出した……ら、それがそのまま通ってしまい、言い出しっぺのぼくが編集長をやらされるハメになった、というわけだ。
もちろんこの雑誌はぜんぜん売れなかったのだが、全ページの半分が「あて名欄」で原稿料が要らない(版下も全部自分で製作した)ため、相対的にはがきの裏側(絵はがきの絵の部分)の作者の皆さんにはそれなりの額の原稿料を支払うことができたのが救いではあった。